だいぶ体調も改善してきたように思えたので、地下鉄にまた挑戦する気になった。前回は1駅だけ乗ったので、今回は3駅先まで行ってみた。ホームで電車を待っている間も、電車に乗っている間も、ほぼ大丈夫だった。
下車駅は大学のキャンパスがあり、ホームは授業に向かう学生で混雑していた。ここで軽いめまいが出たが、気分は悪くはなかった。そういえば久しぶりに階段を昇った。
めあての食堂に入り、食券を店員に渡して料理を待った。外食時にオーダーを待っている間に発作が出てトラウマになって以来、一番緊張する瞬間だが、ここまではとくに大きな問題はなかった。
料理が運ばれてきた頃には少し緊張が高まっていた。それでも食べ始めれば味に集中するはずだからと自分に言い聞かせ、箸を動かした。大きな肉のかたまりを口に入れたときに、肉の繊維が歯の間にはさまり、飲み込もうとするとそれがひっかかって少し苦しくなった。そうなったら焦り始めてしまい、落ち着きを取り戻そうとしても収拾がつなかない感じになった。
定食はボリュームも多く、すべて食べられるだろうかとぼんやり考えている間にも気持ち悪さは募っていった。そして初めて発作が起きたときの感覚がひょこんと顔を出した。そうなってからはそれこそパニックになりかけてしまったので、料理を少し残した状態でとにかく店を後にした。
タクシーで帰ることも考えたが、店を出たら少し気分が落ち着いた。店内は学生が多く騒々しかったが、このシチュエーションは最初の発作のときに似ていたので、そういう環境から離れることで気が楽になったのかもしれない。
早く帰りたくなったので地下鉄の入り口に入っていった。ホームでは早く電車よ来いとじりじりしていたが、いざ乗車した後は、座席に座って落ち着くことができた。どうやら発作を起こすことなくやり過ごせたようである。
ちょっと無謀だったかもしれない。発作は出なかったので今回の挑戦は成功だったと言えるかというと、そうでもない。むしろやはり病気はまだ根強く残っていることが再確認され、暗い気持ちになった。仕事への完全復帰も、少なくとも当面は難しいのではと思った。再来週に心療内科を受診するが、どうして病院の予約を取るのにこんなに間隔が空くのだろう。
ふつうに生活できるようになるまで、まだしばらく時間を要しそうである。