昨年、体調を崩した。カレー屋で、急に気を失いそうな感覚に襲われた。心臓の病気が疑われたが、結局はっきりとした原因はわからなかった。パニック障害のような感じでもあるが、紹介された心療内科の先生も、診断を下すほどではないとのことだった。しかし実際、死ぬのではないかという恐怖に襲われた。
以来、外食が苦手になったし、遠出も、もし行った先でおかしくなったらという心配が頭を離れないため、めったにしなくなった。テレワークしていることもあって、行動範囲は近所のスーパーと公園だけになってしまった。来年、欧州旅行をしたいと思っているが、こんな調子では本当にできるかわからない。昨夏には、道で失神した。それ以来、右手首がおかしなままで、腕立て伏せも満足にできない。
要は、不幸である。生活に、つまりは人生に、いろいろ制限がかかってしまった。だが、病気をしたからこそ、得られたものもある。
その最たるものが、禁煙である。以前は一日1、2箱吸うヘビースモーカーだった。自力ではやめられないと諦めていたが、はからずも病気の恐怖でスパッとやめることができた。
次に大きいのは、自炊の習慣がついたことだ。外食が苦手になったのがすべての理由ではないが、なぜか自炊をする気になった。昨年の年末も近い時期である。以来、もうよほどのことがない限り、自炊している。これによって、食費を大幅に削減できた。今後、会社をやめるにせよ、生活費を下げられたのはなんにしてもよかった。しかも、いろいろなレシピを試し、楽しんでやれているし、実際においしく作れるようにもなってきたから、食費を切り詰めている悲壮感はまったくない。むしろ、いかに食費を抑えつつ美味しく楽しめるか、ゲーム感覚でやっている。
これら2つは、病気にならなければ、手を付けられていなかった。そう考えると、病気で失ったものも大きいけど、同じくらい、得たものも多かったといえるだろう。禍福は糾える縄の如し。