焼きスパのおいしさと、日本人の改変力

イタリア人は激怒するのかもしれないが、焼きそばのように、茹でたスパゲティを具材と炒めると、とても美味しい。ふつうに作るパスタも好きだが、焼きスパになると、また違った美味しさがある。味付けは醤油で和風仕立てにする。肉ときのこ類、青菜の組み合わせが好きである。こういったスパゲティを食べさせる店もある。関西にいた頃は、ローマ軒という店のスパゲティが好きだった。関東にもあるのだろうか。

日本人は、オリジナルの料理をアレンジするのが得意である。カレー、餃子、ラーメンなどは、その好例だろう。ナポリタンというスパゲティも日本発祥のようである。イタリア人はパスタにケチャップを使うと発狂するらしいが。

こういう、異なるものを取り入れ、模倣し、改善していく事例は、いたるところにみられる。工業は欧米からその技術を導入し、改善し、世界で確固たる地位を築いた。日本人の真面目で品質にこだわる特性が、同じものを別次元に引き上げるのである。

一方で、オリジナルものを、一から創出することにかけては、日本の力はどうなのだろうか。GAFAMのような企業が日本に生まれているかというと、残念ながらそうではない。

海外に行くと、日本の自動車はやはり世界でも相当の地位を誇っていると感じる。アメリカに行けばトヨタのピックアップトラックをよくみかけるし、フランスでもトヨタはじめ日本車は人気のようである。自動車は日本人が発明したものではないが、類まれな模倣力と改善力により、世界中で高評価される産業を作り上げた。

いまはAI、半導体の時代である。材料ベースでは日本の素材企業が強いといわれるが、そのエンドユーザーである半導体の製造は台湾や韓国、米国の企業が強い。ここでは自動車と構図が異なり、日本は川上のポジションで存在感を発揮している。北海道に先端半導体の工場を建設する計画も進んでおり、今後は半導体製造の分野まで強い産業を打ち立てられるか、日本の模倣力、改善力が問われる。

もっとも、焼きスパにしろカレーにしろ、日本人に好まれる味が、そのまま世界に通用するかは別問題である。おそらく、日本風のカレーや焼きスパが評価されるのは、日本国内だけだろう。それと海外在住で、日本の食文化に親しんだ経験のある日本人に限られると思う。日本人としては、まず日本人向けに改良、改善された製品やサービスを享受できれば、嬉しい。
だが、世界で評価されるには、マーケティングに基づく改良、改善が求められる。目的、ゴールを正しく設定し、日本人の強みである改良、改善することができれば、つまり世界市場をターゲットに、日本の技術力を駆使して製品なりサービスを創出すれば、まだまだ日本の産業は発展できる気がする。内向きの視点では、日本では受けても、世界では見向きもされない。日本は、自らの持つ力の使い方を、よく考えるべきなのかもしれない。

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