ちなみに、行きの成田から香港までの香港空港のフライトでは、あんこの入ったコッペパンだけだった。ネットの事前情報通りである。
さて、いよいよイスタンブール空港に着いた。空港から旧市街にあるホテルまでは、ホテルが進めてくれたシャトルサービスを利用することにしていた。空港玄関外の指定の場所に行くと、そこに立っていた男に、しばらく待っていてくれと言われた。ほかにもシャトルサービスを待っている観光客がたくさんいた。人種はさまざまであった。タバコを吸う人間も多い。
そして、いよいよ自分の番が来た。1人の別の男が現れ、私を含めた10人くらいの観光客を先導し、移動を始めた。送迎車は空港敷地内に入れないらしい。しばらく歩き、エレベーターで地階に着くと、先導していた男が、観光客をそれぞれ、別の車に差配し始めた。てっきりバスなどで他の客と一緒にホテルに行くのかと思っていたら、みんなバラバラの車に乗るシステムだった。思うに、そのほうが、より多くのドライバーに仕事が行き渡るからだろう。
その車はどの国のものかわからないが、大型の黒いジープのような車種だった。車内には灰皿が備え付けられており、運転手は喫煙していなかったが、しみついたタバコの臭いがきつく、頭が痛くなってきた。空港周辺の殺風景な景色のなかをしばらく走っていたら、雑然としたエリアに入った。アジア地区だったのだろうか。天気が曇っていたこともあり、なんだかイメージしていたのと違うな、と思いながら、やけに揺れる車内で、タバコの悪臭と戦っていた。運転手はうんともすんとも言わない。
やがて、賑やかなエリアに入り、大きな海峡がみえてきた。ボスフォラスである。これにはさすがに興奮し、運転手に「これがボスフォラスか?」と英語で尋ねたが、運転手は言葉がわからないという身振りをした。後に知ることになるが、町中ではとくに、英語が通じない店が多い。とにかく、運転手とコミュニーケーションを取ることは諦め、車窓の外を眺めた。車の出来が悪いのか、道が悪いのか、とにかく揺れが激しい。タバコの臭いともあいまって気分が悪くなり始めた。
ともかく、いよいよ旧市街らしい雰囲気のエリアだ。車はボスフォラス沿いにしばらく走った後、坂道を登り始めた。このあたりは地面が石畳である。だから車の揺れもさらに激しくなっていく。一体いつ着くのかとぐでんぐでんになっていた。eーsimを契約していたが、なぜかつながらず、グーグルマップでいま自分がどこにいるかも確認できない。なぜなら、日本にいたときに誤ってeーsimをアクティベートしてしまっていて、イスタンブールに着いたときには、すでに契約期間を過ぎていたのだった。
どうにかこうにか、ホテルに到着した。小さな、しかし親しみやすいホテルである。ドアを開けると、口ひげを生やしたイケメンが受付にいた。流暢な英語を話す人で、ほっとした。親切にも、彼は空いているひとつ上のグレードの部屋に案内してくれた。私が予約していたのは、一番料金のやすい、地下の部屋だったが、案内されたのは上階の部屋だった。
スマホの通信ができない理由がその時はまだわからなかったので、ホテルのワイファイを使ってeーsim提供会社のチャットサービスで現在の状況と対策について、しばらく相談していたが、前述の通り、契約期間が切れていた。だが先方は私の状況に同情して、クーポンを発行してくれた。これでもう一度申し込めば、追加料金なしでモバイル通信ができる。だが、最悪なことに、クレジットカードで決済をしようとしたら、海外サイトのせいか、弾かれてしまった。クーポンは1回しか使えない。ダメ元で、もう一度チャットにクーポンの再発行をお願いしたが、ときすでに遅し。そのチャットは消えてしまっていた。オーマイガー。仕方なく、別のカードを使って、また新たにお金を払って、契約した。
出足からもたついてしまったが、いよいよイスタンブール観光の始まりだ。すでに時刻は午後7時を過ぎていたので、ホテル近くのレストランに行き、店員が進めてくれた料理を注文した。ケバブ料理の一種らしく、カットされたパンの上に肉とソースが載っていた。美味である。路上にはいたるところに猫がいる。席は店の外だったので、観光客や車がひっきりなしに通る。こうして、初日の夜は更けていった。

