珍珍珍と書いて、さんちんと読む。こういうラーメン屋があって、それが食べたいラーメン屋の味に似ているらしいという情報を得て、行ってきた。結果、かなりイメージに近い味だった。すりおろしたニンニクを入れたスープがおいしい。麺はちょっとやわらか過ぎだったかな。昔は都内にもたくさんこの系列店があったらしいが、どんどん減っているらしい。自分の好きな味が消えていくのは悲しいので、できるだけ長く続けてほしい。
おいしいのに、なくなってしまう店は多い。一番おいしと思っていたとんかつ屋も、随分前に閉店してしまった。料理人はみな昭和の職人風で、動きはてきぱきし、客に媚びず、むしろ威圧するような感さえあったが、味は一級品。客も常に入っていたので、金の問題で閉店したのではないだろう。もう10年近く前の話だから、コロナも関係ない。チェーン店であれば、同じ味を食べられるのに、個人店だったからそれもできない。とんかつ難民である。
一代で人気店を築けても、一代限りで終わってしまうのはもったいない。おいしい店が消え、大しておいしくない店が残るのは、なんともいえない気分になる。飲食店の経営は、味がすべてではなく、むしろ味以外の要素が大事なのかもしれないが。まあレシピの秘訣を外に出さない、その職人気質があるからこそ、美味しい味も生まれるんだろうけれども。
味というのは、無形文化財みたいなものだな。珍珍珍も、万人受けする味ではないと思う。しょっぱいし、アブラっぽいし、おしゃれで女性受けする味とは真逆である。でも、それがおいしい。この味がこの世から消え、二度と味わえなくなるのは、損失である。なんとか残してほしいものだが、新世代の味が駆逐していく悲しい運命にあるのかもしれない。なんだか寂しい話である。