すっかり涼しくなった。毎朝の散歩も、Tシャツ一枚では厳しく、羽織ものを着ていく。散歩は朝起きて水を飲んだらすぐ出かけるようにしているのだが、困るのが便意である。便意も切羽詰まったものから、遠い予感までグラーデーションが幅広い。散歩コースの途中には公衆トイレもいくつかあるので、もし抜き差しならぬ状況になったら(使い方あっているのか)、そこに駆け込めばいいという心理的安心感があった。
今朝も、出がけにかすかな予感を覚えたものの、そういうことから、とにかく出かけた。そして散歩も終盤にかかり、サンドイッチでも買っていくかと思った途端、来たのである。だが心配無用、もう公衆トイレを視界にとらえている。焦る必要はないので、平静を装い、しかし別の方向から来るかも知れない競争相手を牽制しつつ、トイレへ一歩また一歩と着実に歩を進めていった。
そしてトイレ内に入り、ドアを開ける前にズボンを下げようかと意気込んでいたときに、ドアの張り紙が非情な事実を告げていた。修理中。
マジか、と。呪いの言葉を吐きつつ、もう家までの間には公衆トイレがないことを思い浮かべながら、カフェに入ってトイレを借りることも考えたが、もし使用中だったらと思うと、選択肢から外さざるを得なかった。こうなったら、目指すべきは家のトイレ一択。といっても最終的な瞬間にはまだ猶予がある感じではあったので、横断歩道では信号が変わりかけるのをいいことにダッシュしたりして、少しでも家までの距離を縮めることしか頭になかった。
人通りの少ない道を選び、万が一に備えるつもりが、狭いその道に清掃者や掃除のおじさんがいたりして、これじゃ出してしまったときに隠せないではないかと焦りつつ、マンションのエレベーターにたどり着いた。運良く住人が1階に降りてきたところだったので入れ違いに滑り込むやいなや閉めるボタンを連打。ドアが閉まり始めてから、行先階のボタンを押した。
結果、間一髪であった。文字通り、間一髪だった。ズボンをおろしたと同時に、、まあこれ以上の描写は必要ないか。
人生では、こういうことがよくある。決めつけていた現実が、予想に反して違っていたら、そのときは焦る。だから、下調べ、準備は大切だという教訓を、改めて認識させられた。