井上尚弥強し

モンスター井上がルイス・ネリをKOした。1R目でダウンを奪われたときは心底驚いた。東京ドームという特別な会場が、彼の気分に作用し、入れ込みすぎていたようである。いつもなら慎重に相手を見定めるのに、昨日は最初からフルパワーでパンチを繰り出し、勢いで圧倒しようとしていたかのようだった。そのスキを左フックでついたネリも、相当のボクサーである。

ダウン後はクリンチとフットワークでネリの追撃をかわし、ラウンドインターバルに入った。ダメージがどれほどあったかは不明だが、2R目からは、もういつもの井上に戻っていて、さっそくネリが大振りした瞬間に左フックでダウンを奪い返した。

ラウンドが進むにつれ、両者の実力差が明らかとなってきて、井上のジャブがネリを捉え始め、ネリが手を出せばカウンターで井上が応える。井上の強打もあり、ネリは徐々に追い詰められていった。

結果、6RKOである。ネリの過去の悪行があったとはいえ、4万人の大観衆が入ったアウェーの地で、無惨にも井上に痛めつけられ、それでも立ち向かおうとするネリの姿は心に訴えかけてくるものもあった。いままでの井上の敵のなかで、最も怖かった。その怖さがあるからこそ、井上も序盤は自分のペースを見失ったのかもしれない。

とにかく、攻撃にしろ防御にしろ、井上のスキルはライバルたちから一つ抜け出ている。同じ2本の腕で勝負するゲームなのに、これほどまでに出る差は、どこから来るのだろうか。練習熱心なのは言うまでもないが、他のプロボクサーだって一所懸命練習して試合に望むわけだ。今回のネリだって、5ヶ月間のキャンプを張って、万全の状態に仕上げてきた。それでも、圧倒的な差で勝敗がつくというのは、残酷であり不思議である。

どの世界でも一流が人一倍練習するのは確かである。ただ、だからといって誰もが一流になれるわけではない。才能も関係しているのだろう。ただ、はっきり言えることは、ある一定の水準以上の努力をしない限り、一流にはなれないということだ。水準以下の努力をしているだけで、成功できないと嘆くのは、努力不足な人間の戯言である。もし一流になりたくないのであれば、そんなに無理して努力する必要はないけどね。

40代。語学(英仏)をマイペースで勉強(主に読書)していて、たまにウクレレを弾く。バーピーなど自宅でできる自重トレを習慣化している。

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