なにも取り柄がないので、とりあえず将来の安泰のために語学スキルでもつけるかと考える人は多いだろう。語学を通じて世界が広がる、という文言も巷にあふれている。だが、それが収入増に結びつくかどうかは、よくわからない。
20代の終わりに英語をやると決めた。それ以降、読書は英語の本だけにしてきた。英会話教室に行くでもなく、ただ英語の本だけを読んでいた。読書量としては大したことはなかったが、毎日読むようにしていた。村上春樹の小説も、英訳が出てから読み始めていた。
そんなこんなの生活をいつしか10年以上続けてきた。コロナ禍を機にオンライン英会話も始めた。TOEICは820点。年収は20代の頃から比べて倍増した。こう考えると、英語学習が年収アップに寄与したようにもみえるが、しかし実務上、英語を使う機会はほとんどない。だから、英語スキルと年収が関係しているかどうかは、何ともいえない。
フランス語の勉強は3年前くらいから本格化した。学校にも行っているが、個人教師も使った。彼らはフランス人で、日本語がほとんどできないから英語でフランス語を学んでいる。英語ができなければ、こういう出会もなかったと思えば、世界は広がっていると言えるかもしれない。
ただ、求めていたのは、もっと凄い成果だったり、自分の性格ががらっと変わるような変化だった。文章も深みを増すかと思っていたが、書くのが習慣化しているから、その営みによって上達しているだけであり、語学は関係ないのかなとも思う。まあラテン語もやり始めてからは、厳密な文法を学んだことで、タイトな文章を書けるようになったような気もするが、これも実際にはどのように寄与したのかはわからない。今では古典ギリシャ語にまで手を出してしまった。
ひとつ確かなことは、時間つぶしとしては、語学学習は打ってつけであるということだ。もっとも、そのつぶしかたも楽しめればなおいいが、大抵は課題に追われ、その課題もちんぷんかんぷんで悪戦苦闘するのがオチであるが。