裸足感覚のシューズ

今年の夏、通気性のよい靴を探し回っていたら、メレルというブランドのベアフットシューズを靴屋の店員に勧められた。ベイパーグローブというシリーズで、たしかにアッパーがメッシュで通気性は抜群である。足に汗をかきやすく、通気性の悪い靴だとすでに蒸れて不快になるので、サンダルタイプなど、いろいろな靴を試してみてが、どれもしっくり来なかったところで、出会った靴である。しかし、ベアフットシューズという、つま先から踵までがフラットで、ソールも6ミリメートルしかない構造である。

クッション性に優れたシューズに慣れていた足にとって、ベアフットシューズで歩くということは、はじめは危険ですらある。かかとで勢いよく着地しようものなら、激痛が走る。自然と、かかとではなく、足裏の前の部分で着地しようとするが、最初はとにかくふつうに歩くことすらできなかった。舞妓さんが狭い歩幅でしずしずと歩くように歩くので、クッション性に優れる靴を履いた現代人たちにずんずん追い抜かれる。通気性はいいが、こりゃ失敗したかな、と、正直思ったこともある。公園で歩いていて、小石を踏むと、これまた足裏が痛い。本当に、おそるおそる歩いていた。

それがいつしか、ふつうに歩けるようになった。足が痛くならない歩き方がみについたのか、足自体が強くなったのかはわからないが、クッション性のある靴を履いていたときのようなスピードで歩けるようになった。そして、ベアフットシューズで歩いていると、身体の使い方も人間の本来あるべき姿に矯正されていくのだという。かかとから着地することは少なくともなくなったわけで、その影響は何かしらあるだろうとは思うが、正直よくわからない。ただ、クッション性のある靴を履いているときは、ある意味で衝撃吸収をクッションに頼っていた、つまり肉体としては怠けていたということになるようで、たしかにベアフットシューズを履くようになってからは、歩くだけで脚の筋肉が疲れるようになった。自分の脚で衝撃を吸収するために、いろいろな筋肉を動員するかららしい。

とにかく、歩くぶんにはなんの問題もなくなったので、次はジョギングをしてみたいと思う。ただ、走るとなると足への衝撃も2倍、3倍に増えるだろうから、もう少し厚底のタイのほうが安心である。そう思っていたら、メレルには、14ミリメートルの靴底のトレイルグローブというベアフットシューズがあるようである。これをジョギング用にしてみようかと考えているが、いまのベイパーグローブで走ればいいのではとも思う。たんに散財したい気持ちになっているのかもしれないし。

ただ、意図せず、ベアフットーシューズを履くことで、足首や足裏が鍛えられたようである。これが正しい身体の使い方なのだと思うと、もうクッション性のあるシューズを履くのが、惜しくなる。せっかく矯正が進んだのに、元の怠惰な現代人の足に戻ってしまうではないかと、なにかもったいない気がしてくるのである。厚底タイプのトレイルグローブ(ベアフットシューズにしては)を買うかどうかは、いまあるベイパーグローブでもう少し歩いてから、決めればいいか。

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